たつがねMTB大会②

ビギナー(JOE選手、ブップ選手)→エキスパート(マッチ選手)/エリート(kou選手)→スポーツB(キクリン選手、俺)という順にレース進行。
順調にレース進行がなされ、いよいよスタートラインに並ぶ俺とキクリン選手。
これから我が身にふりかかる極度の苦痛に対する防御反応なのか、虚脱感がカラダを重くする。毎度のことではあるがDNSという選択肢が頭をかすめる。が、刻々とその時が迫ってくる。
パーン!静寂を破る号砲と同時にイッキに選手の波がコースへと吸い込まれていく。これから始まる3ラップ+αのガマンくらべが幕を開けたのだ。
「やっぱ早い!こんなペースではもたないんじゃねーの」とボヤク俺に、容赦なくクランクを回す他の選手達。
でも気がつくとなぜか4番手に着いていた。
今回は昨年のダリヤカップほどの仕上がりはないと自分でも落胆していたのだが、「ちょっとちょっとぉ」って感じの好位置に、とりあえず1周は様子を見ようと番手をキープ。
すると前2人(1人は実業団TR選手でこのレースの前のエリート5週を走った直後にまた今回3周を走るといった猛者)の選手に開きが出始めてきた。
これは全然格が違うなと判断し、すぐさま“3位狙い走り”を固く心に誓ったのだった。
しかしながら、慣れないトリッキーなシングルトラックと、急激な疲労感から来る注意力散漫状態で、注意していたはずの切り株に乗り上げペダルから足が外れてしまい、前方の選手に離されてしまった。けれどなぜか追いつけた。
「もしかしたらチカラ的に俺の方が上なのか?はたまた向こうも様子見?」答えの出ないかけ引きが頭の中でグルグルと渦を巻く。
「最終ラップの最後の登りで仕掛けよう」と決めたのは2週目のコントロールタワーを過ぎた時だった。
2週目のシングル、今度は華麗にクリアーしようとおもっていた矢先にコケた。今度はシフトミスでジャムってしまい、ゴローン。
情けなぁ…。しかしまた追いつけた。ますます懐疑心は深まるばかり。「前の選手も全力で走ってない。脚をためているに違いない。」そうなると、ますます走りが消極的になっていく俺。そんな気の緩みからかまたもや転倒!とほほ…
今度はハンドルが木にヒット!トップチューブで左ふとももを強打、「かなり痛てー」、ありえない方向に曲がったハンドルを元に戻し再スタートをすると、オフロードバイク張りの「ブィーー」という音がフロントタイヤから聞こえてきた。
「なになに?エンジン付いちゃったの?」と喜んだのもつかの間、ゼッケンプレートがさっきの転倒の衝撃で3点止めが1点止めになていて、タイヤに干渉していた。直すにも直せないアクシデントだけに、「うなり音がなんかその気にさせるぜ!」とポジティブシンキング、「いや待てよ、ゼッケン取れたら失格?」「えっマジで?」と思いながら最終ラップに突入!
案の定、コントロールタワーを過ぎるころ、若いお姉ちゃんスタッフが「何番かわかんなーい」と言ってきた。
その声に「53だ」と吐き捨てた俺だったが、「間違った52」、無駄な空気をはいてしまい心拍数がイッキに上昇。
泣いても笑っても最後。ポディウムに上がれるかいなかの雲泥の差がこの1周で決着してしまう。
そしていよいよ決戦の場所が見えてきたと同時に、軽快なファンファーレが俺の心の中で高々と鳴り響いた。ギアを上げ、ズバッと完膚なきまでに抜き去り、その後は淡々とリズムを刻んだ。
コース脇には戦ったステージは違えども、いま俺と一緒に戦ってくれている仲間の声援。とりわけjoe総監督においては、ツールやジロにでてくる“悪魔おじさん”や“ブルホーン屋郎”かのごとく、もがく俺の脇で妻の名前を持ち出しながらの熱狂的な声援を送ってくれた。
「やっぱいいな!仲間って。いろんなものをもらったり、与えられたりできるんだもんな。」とその場面の記憶は微妙にスローモーション。
そしてゴール。今の練習量からすれば奇跡ともいえる表彰台の一角を勝ち取ることができた。みんなありがとう!みんなの顔が見えたからこその結果、サンクスです。
表彰式が始まるころには気温がグッと下がり、肌寒いというか芯から冷えるといった激変の中、なぜかキッズたちは半そでに短パン。「やっぱいいね若いって」。次々に名前が呼ばれ、いよいよ俺の名前が呼ばれる番と思いきや、「あれ?いっこ早いんじゃないの?俺が2位ってなんで。」あくまでも、ダブルエントリーしていたエリート選手は、何ていうかオブザーバーみたいな感じでスポーツBに出場したらしく、そういう結果になった。
そして最後の最後に「お楽しみ海産物ゲット抽選会」が大盛り上がりのうちに幕を閉じ解散。俺は千円相当の味の付いたほたてをゲット。
今や巷では空前のロードバイクブーム。どっちが良いとか比較対象するものではないが、両方あれば間違いなく自転車に対する考え方の幅が増える。こんな俺が言うのもなんだが、もし資金的に余裕があるのであればMTBで自然と触れ合ってみてはいかが…?でしょうか。
Bianchi-Sato記者)